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2014年10月 1日 (水)

2014年9月に読んだ本

 最近歴史系の本ばかり読んでいた反動なのかなんなのか,9月は意識したわけではありませんが生き物系の本の割合が多くなりました.

 

○ ウルトラライトスタイル: UL山歩きのビジュアル読本 (Gakken Mook) 鈴木昌子編集 128p.学研パブリッシング

 今年の夏は天候が安定せず満足に山にゆくことが出来ませんでした.ULスタイルの山歩きは実践したことがありませんし当面予定もありませんが,普段の山行装備をより軽量化するヒントが無いかと読んでみました.ULの考え方や実践者の装備から始まり,グッズ,ULグッズの作成者へのインタ ビュー,UL山行のレポートなどが簡便に一通り載っています.それぞれ深掘りしているわけではないのでULとはなんぞや?を把握する感じの本です.最新のグッズを網羅的に紹介・比較するカタログっぽい本と一緒に読むと楽しそうです.

 

○ 国指定天然記念物 成東・東金 食虫植物群落ガイド 大場達之・中村俊彦監修・「成東・東金食虫植物群落」ガイド編集委員会編集・協力 62p.成東町教育委員会

 現地を訪れたこともある千葉県にある有名な食虫植物群落の天然記念物指定80周年を記念して作製されたコンパクトなガイドブック.本書は横浜の古本屋さんで見つけて購入しました.読んでみると,色々な植物が消滅したり減少したりしているようですが,かつて人里に近い湿地に生えていた,日本人にとって身近だったと思われる植物が写真で紹介されていて,何となくほのぼのとした気持ちになります.その他にも,主要な植物の開花フェノロジーや群落の保護活動の沿革,指定地の年表などがコンパクトにまとめられている好著です.人の無意識の管理により維持されてきた食虫植物を含む群落が,指定により従前の管理が出来なくなり遷移が進み群落が衰退という,天然記念物にお決まりの運命が古く大正時代に認識され,高名な牧野富太郎博士が学術誌で報告したと書かれていました.その後,色々とあったようですが地元の方々のご努力により,今日まで何とか維持されてきたことが判ります.何時までも地元に愛され群落が残って欲しいと感じました.

 

○ 図鑑大好き!: あなたの散歩を10 倍楽しくする図鑑の話 千葉県立中央博物館監修 111p.彩流社

 図鑑学という学問があるかどうか判りませんが,もしあれば本書は日本の図鑑についてコンパクトにまとまった良書といえます.また,作り手側(「第2部 図鑑を作る人々」,「エピローグ 図鑑をつくろう」)と利用する側(「第4部 使える図鑑」)それぞれの視点からのアプローチ,図鑑の歴史を扱う「第3部 日本 図鑑史」など,多角的な視点から構成されている点や,同じテーマで昆虫,植物,鳥類など色々な生物群を取りあげていている点で,バランスがとれています.さらに,「エピローグ 図鑑をつくろう」は,”使える図鑑”を作るに際して,どのような写真を撮ったらよいか(=裏返せば図鑑を使うにはどういう視点から生物を観察したらよいか)をよく考えさせてくれますし,エピローグを含め各章で複数の分類群が並列的に書かれているので,他の分類群ではどのような視点に立って図鑑が意図・作成されているかを知ることができ,読み手の考察に深みを与えてくれると思います.

 その他,個人的に探していた昔の図鑑の生態描写(小学館の学習図鑑シリーズ)が口絵の最初の見開きに出ていてビックリ.「第一部 思い出の一冊」でやくみつるさんも言っていますが小学館の学習図鑑のパノラマビューは最高です.それとは別にコラムに書かれていましたが,この見覚えのある絵柄は図鑑画家の清水勝氏という方の作品であることを知りました.

 

○ アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学) 丸山宗利著 224p.東海大学出版会

 8月に読んだ昆虫はすごい (光文社新書)」を書いた著者による本.ご専門の好蟻牲昆虫を中心話題として分類学の面白さや魅力をこれでもかこれでもかと書いていて,自ら採集し分類を行う人であれば昆虫以外の分類群を専門としていても,とっても面白く,うんうんそうだよねって納得しながら読めると思います.実際にそんなことをしたらアリたちの顎や毒針の集中砲火をあびてタダではすまなそうですが,まさに「濡れ手に粟」という言葉がふさわしい好蟻牲昆虫の未開拓な分類の世界.新属新種が続々と見つかるのは,きっと楽しくってたまらないと思いますし,読んでいて楽しくって仕方がない様子がひしひしと伝わってきます.第3章に「本当の生物多様性未踏の地はどこに」というパートがあります.着目する人が少ない・いないハビタットを利用する生物群は,例えそれが人にとって身近な場所であろうとも調べられていないことが多く,研究者として,そういうニッチェを見いだした喜びは一入でしょう.そういう未知・未開・未踏の迷宮に迷い込んでみたいものです.第4章の 「コラム 在野研究者と職業研究者」や「さいごに」に記載された「附記・本書の言葉遣いについて」を読んで,筆者の研究者としての姿勢に敬意を表したいと感じました.今後とも是非とも様々な分野で活躍して欲しいと思います.

 追伸:巻末の引用文献がとても充実しているようです.こんなことを言うと筆者に怒られますが,この分野の迷宮に迷い込んでいる(迷い込もうとする)研究者以外(=即ち圧倒的大多数の読者)にとって,これほど役に立たない引用文献はなかなかありません.といいつつ,たまたま目にした最後の引用文献の著者がアリの専門家でありBiological diversity (Bioldiversity)の造語でも知られるO.E.Willsonだと気づいてニヤリとする自分に笑ってしまいました bleah

 

○ 猫ピッチャー2 そにしけんじ著 141p.中央公論新社

 待望の第2巻.ミー太郎,かわいい lovely 第3巻も待ってるニャ sign03

 

○ ハエトリくんとふしぎな食虫植物のせかい 木谷美咲作・ありたかずみ絵 95p.VCN

 先月読んだ私、食虫植物の奴隷です。」の作者による子供向け絵本(本の前半).タイトルの通り食虫植物のハエトリソウを主人公にしています.ハエトリくん他,ムジナモ,ミミカキグサくん,ウツボカズラくんなど,中々見事にデフォルメされていて可愛いです.後半は易しい分類や育て方,消化液のph測定,前述の成東の自生地案内などものっています.幼稚園〜小学生低学年向け?の食虫植物の本として類書もなくバランスがとれていてオススメのように思いました.あとがきに書かれていましたが,大人向け等々,読み手を変えたハエトリくんの活躍を期待します.

 

○ 裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学) 小松貴著 276p.東海大学出版部

 前読のアリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学)の著者である丸山氏の共同研究者であるアリヅカコオロギを専門とする研究者の書いた本.丸山氏の著作同様,好蟻牲昆虫(生物)の多様さに驚かされると共に,タイトルに出てくる「裏山」のようなところでも未だ判らないことが沢山隠されており,今まで着目されなかったマイクロハビタット・ニッチェ・時間帯等を調べることの重要性を教えてくれます.もう調べ尽くされているといった思い込みや妄想にとらわれている限り,目の前にあるかもしれない(アリス(蟻巣) イン )ワンダーランドの扉を開くことは出来ないのでしょう.アリヅカコオロギ等の微細昆虫や飛翔中の微細なハエ,生き生きとした表情の小型哺乳類など,写真がすばらしいのも本書の特徴.丸山・小松両氏の関わる「アリの巣の生きもの図鑑」,思わず買っちゃいそうです.

 

 

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